~東大阪・長瀬のいづみ書店
近鉄長瀬駅で降りる。
関西のマンモス大学の雄、近畿大学のお膝元である。
今回来た理由はただ一つ、とある知人の近畿大学の先生に
長瀬に美味しい洋食屋が近くにあると聞いた。
奥まったところにあると聞いたがそれは案外早く見つかった。
その店でオムライスを注文し、昼食を済ませる。
やはり地に縁ある方のクチコミにハズレなしだ。
せっかくなのでいつもの如くあてもなく街を歩いてみることにした。
学生街だけに若者が多く活気があるが、そんなイマドキな活気とは対照的に
古びた純喫茶、麻雀店なども多く立ち並ぶ。
古いものと新しいものが共生しているそんな印象を受ける。
近畿大学前に『いづみ書店』なる
古本学術書専門店の看板を見つけた。
よし、入ってみよう。 奥では初老の男性が静かに本を読みながら店番をしている。
意を決して喋りかけてみることにした。
「いらっしゃい」 意外な笑顔で返してくださった。
店主さんによるとこの地で店を開いて47年になる。
昔は近畿大学の学生が列を作って店の中で屯していたそうな。
「はよ帰りや~言うてもなかなか帰ってくれへんかった。笑
ここでよう学生同士が議論白熱して喧嘩なりかけてたなァ。」
「それに比べたら今は・・。学生も滅多に来なくなった。皆、本読まんくなった。
勉強もしなくなったのかもしれない。」と嘆く。
しかし未だに『当時の常連学生』が「おっちゃん久しぶりやな~」と訪ねてくれることもあるそうだ。
『当時の常連学生』が北海道、山形やあちこちの大学の教員をしてたりで
研究会や学会で関西に来た時に顔を出し、寄ってくれる。
すっと名刺を差し出してくれて「なんや君、出世したな~って昔話をするのが嬉しいんよ。」
店内に飾っている男性の写真が気になったので訪ねてみると2代目近畿大学の総長が来店した時なんだそうだ。
「総長さん、新年の宴会の後に寄ってくれてな。よう来てくれた。」と。
その後も店主と神戸の古本屋(海文堂)や常連学生の昔話を1時間くらい喋る。 「せっかく遠いところから来てくれたからこれ持って帰ってよ。はい、お土産!」と
『社会福祉年表』なる古本を頂いた。
なんと気風の良い店主さんか。これが長年地元で愛されている秘訣かもしれない。
いづみ書店は長瀬の歴史が詰まった店である。
50年60年、いやそれ以上に末永く続けて頂きたいと思う。