~寛子さんのたこ焼き

天満駅の北側、狭い裏路地に小さな小さなたこ焼き屋がある。 よく見ておかないとすぐに見落としてしまいそうになるそんな場所だ。 56年もの間、ずっと一人この場所で店を営んで来た。
「近所の人より、私は遠くから来た人を大事したい。」 そう話すのは店主の寛子さん。 そんな寛子さんに会う為、和歌山や京都から何度も足を運ぶ人もいるそうだ。

「うちのたこ焼き、見た目変わってるやろ。この卵見てごらん。これを使ってるんよ。」 そう言って寛子さんは笑顔でボールに入ったたくさんの卵を見せてくれる。

「ソースも特別や。
これだけ売ってって言う人も居るけどお断りしてるねん。
ここで食べてもらわないとな意味ないからなぁ。」
「この街も随分変わっちゃったけど私は変わりたくないの。もうちょっとだけね、続けたいのよ。」


「兄ちゃんせっかく来たんなら。この辺やったらあの立ち呑み屋がええ!寛子さんに教えてもらった言って行っといで!」

背中を押され、また僕は次の店へと流れるのだった。